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■特別座談会「ホテル留学を考える」

曽根 靖雄
ICC国際交流委員会CEO

マシュー・サスマン
アスパイアインターンシップ
プログラム創設者

近藤 寛和
オータパブリケイションズ
ホテリエ事業部部長

「日本では、ホテル業界への就職の人気が高い」

曽  根:日本ではホテル業界の人気が高く、高学歴の人がホテル業界、しかもマネジメント以外の仕事にアプライケースも少なくありません。そこが欧米と異なるところだと思うのですが、この違いはなぜなのでしょう?

近  藤:欧米では、大学を卒業してホテルで働こうという人は少ないですね。

マシュー:日本では、英語を活かして仕事をしたいという人が多いからではないでしょうか。ホテルで働く日本人のモチベーションも高く、キャリアとして長期で働こうと考える人が多い。

近  藤:航空業界と似てますね。特に女性にはCAの次に人気が高い業界です。留学をする人の男女比率はどうなんでしょう?

曽  根:全般的にみると、7:3の割合で女性が多いです。MBAを含め、アメリカのビジネス系は男性が多い。逆にロンドンは語学留学が多く、9割くらいを女性が占めています。

「日本人のホテル支配人が少ない理由」

近  藤:日本もアメリカのような格差社会になってきて、ホテル業界においても、マネジメントに関わろうとする人と、ラインの仕事をしている人の格差がどんどん広がって来ています。

曽  根:特に外資系ホテルなどでは、日本人の支配人が少ないですが、その理由は何でしょう?

近  藤:語学力、それにマネジメントを体系的に学んでいないことが理由ではないでしょうか?

マシュー:日本人はサービスにこだわりすぎる傾向があるように思います。細かいところまでサービスが行き届くというのは日本のホスピタリティのいいところなのですが、もっと視点を広げて、全体的なホテル経営というところから見ようとする人は少ないですね。

曽  根:細かいところにこだわるのだけれども、大枠を忘れがち。外国の人たちには不思議がられます。

近  藤:例えるなら、盆栽そのものは繊細なのに、景色との調和が取れていない。

曽  根:日本人が受けた教育、育った環境によるものなのでしょうが、外国に出てみると大局を見ることができますよね。ヨーロッパの街並にしても100年単位での発想で作られている。それを見たあとで日本に帰ってくると、違和感を感じる人が多い。留学によって大局を見る感性が身に付くんです。日本人から見れば、外国人はいい加減なところがありますが、でも、日本人では考えもつかないことを発想したり、やりのけたりする。前例にこだわりません。

近  藤:欧米のホテル業界を知っている人は口を揃えて、日本のホテルは「商品は一流だけれど商売は二流」だと言います。今後、マネジメントを海外で学んで、日本のホテルで働く人が増えれば、状況はかなりよくなると期待できます。

マシュー:逆にアメリカは、サービスとかチームワークが弱いですね。アメリカから来る友人などは、日本のサービスに感動しますよ。しかも無料。留学することによって、それぞれの国の強いところと弱いところを見ればいいのではないでしょうか。

近  藤:日本人は「サービスは無料」だと考えてますからね。アメリカだと何かしてもらうには、必ずお金がかかる。確かに、その違いも大きいですね。日本でサービス業がレベルアップしない要因のひとつかもしれません。

マシュー:英語力も大きな要因。日本からインターン生を送り出す時に、他の国からも希望者がいて電話インタビューで決定する場合などは、経歴がよくても日本人が落とされてしまうことがあります。ところが、一度日本人インターン生を受け入れたホテルは、日本人の勤勉さや仕事へのモチベーションの高さを気に入って「次も日本から受け入れたい」というところが多いんですよ。

曽  根:日本の教育は、人前でプレゼンするということを学ばないですからね。それでいきなり、就職の時に自己PRと言われても難しいところがあります。就活用のマニュアルで学んでも、画一的です。これからは企業側から、もっとクリエイティブな側面を求められるようになり、そこが評価されるようになるのでは。

「変わりつつある日本のホテル業界」

近  藤:今、日本のホテル業界は、外資系がホテルが増えて変化しつつあります。有名外資系ホテルの中には、外国人ホテリエの下で日本人が働くというところが少なくありません。今まではドイツ人、フランス人、オーストラリア人などがマネージャーとして来ていましたが、今はアジアの人たちが来て、彼らの下で日本人が働いているんです。国籍に関わらず、海外で勉強し経験を積んできた人たちが、リーダーシップを取っているんですね。アメリカの大学や大学院のホテルマネジメント学科を見てみると、国費留学で学ぶ中国人や韓国人がとても多く、そういったところで学ぶ日本人はほんのわずかです。

曽  根:経済的な話をすると、中国やタイ、ベトナムなど、アジア諸国の成長率が8〜10%台であるのに比べて、日本の経済成長はわずか1%。こういう時こそ、海外を見るべきなんです。企業なら人材の流動化や商品の輸出という発想になりますが、家庭では教育が重要。親は子どもの将来を想像するべきです。10年後、20年後の企業で活かされる人材になってほしいと思ったら、語学力やグローバルな中で働くフレキシビリティなど、海外と関わることがキーワードになってくるはずです。

2008年2月28日 オータパブリケーションオフィスにて

曽根 靖雄

ICC国際交流委員会 CEO

1995年、スイスの大手ホテルスクールと提携し、日本人向けのホテル留学研修制度を開始。以後、多数の人材を国内外のホテルに輩出。世界に通用するホテル人育成を目指し、欧米アジアのホテルスクール紹介と、世界各地のホテルでの就労体験プログラムを展開する。

近藤 寛和

(株)オータパブリケイションズ ホテリエ事業部部長

1967年生まれ。埼玉県出身。法政大学経営学部卒業後、(株)オータパブリケイションズに入社。販売部、企画・マーケティング室、「週刊ホテルレストラン」編集部を経て、ホスピタリティ業界人を応援する「ホテリエ事業部」を発足。ホテル業界人の勉強会「宿屋塾」の主宰、多数の書籍・雑誌を編集、業界人サポートサイト「ホテル屋ドットコム」運営などを通し、多角的にホテル業界人や志望学生を応援している。

マシュー・サスマン

アスパイアインターンシッププログラム 創設者

1972年生まれ。ニューヨーク出身。南カリフォルニア大学で経営学の学位を取得した後、1996年に英語教師として来日。1999年に日本初のホテルインターンシップ専門会社「Aspire Internships」を立ち上げる。以降、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、タイ、インドネシア、ベトナム、中国、シンガポール、モルジブなどのホテルへ、約200名の研修生を派遣。